物理の部屋

「ああ・・・私はなんというものを発明してしまったんだ・・・」
私は分岐した時空とコンタクトをとれる機械を発明してしまいました。まだ実験はしていませんが理論上間違いなく使える一品です。しかも相手側の出力入力する媒体を選ばないすぐれものです。
「何言ってるんですか。すごい発明ですよこれは。」
彼は僕の助手です。
「きみはぜんぜんわかってないよ!」
「わかってますよ。他の時空から技術を受け入れたり与えたりすることができます。」
「善い使い方をすればね!こういう機械は善い使い方より悪い使い方のほうが多いものなんだよ・・・」
「それはそうですが・・・まさか発表しない気ですか?」
「できないよ!どういうことかわかってないでしょ?まだ時空同士のコンタクトが行われたことが無いのはわかるよね?」
「どうしてそんなことがわかるんですか?」
「・・・あのね、今までどの時空からもコンタクトを受けたことないでしょ?」
「はい。」
「ということはこんな発明が全時空で初ってことになるわけ!」
「あ、なるほど。わかりました。しかしそれならなおさらすごい。」
「うん・・・」
「未だ進化の途中にある時空とコンタクトをとれば動物の進化の過程の謎が解けたり歴史の出来事の謎の部分を解明できるかもしれないわけですね。」
「急に回転速くなったね。うん、でもたしかに理論的にはそうなる。ただその時空が私たちと同じように進むかわからないんだよ。ただでさえどこかで分岐した世界だからね。それにまずそんな時空を見つけられるかがわからないんだよ。無限に分岐しているわけだからね。」
「たしかにそうですね。」
「それに他の時空の歴史に干渉することが必ずしも良いとは限らないと思うんだ。」
「たしかに、最初は全時空がその時の最高の水準まで上がったとしてもその後はお互い他人まかせになって高めあう競争は減衰しそうです。それにどうせ高い技術をもった時空は今でも分岐しているわけだからこのまま各時空の多様性を守るほうがいいのかもしれません。」
「そう、僕が言いたかったのはそういうこと。」
「しかし何もせずに捨てるのももったいないので1度実験して見ませんか?」
「きみ・・・それが他の時空にとって『観測』に相当したらどうするの?」
「そうでした。すみません。」
「うん。壊すよ。」
「はい。」
ガシャン
「これでよかったんだ。」
「はい。」

その時電話がなりました。
私は嫌な予感がしました。
「こちらそちらの近似値の博士です。聞こえますか?」