本当の事が何かというのは意外とつかみにくいのかもしれません

「全部ドッキリでした。」
僕が突然そう言われたのは夏休みの終わりのことでした。
「おつかれさまでした。」
という声とともに周りの人たちは解散していきます。いったい何がドッキリだったのだろう。
混乱した僕はとりあえず家に帰りました。しかし、家には入れず、両親には勝手に家に入るなと言われました。途方に暮れて歩いていると、友達とすれ違いました。僕は声をかけましたが知らんぷりされました。悲しくなってきた僕は彼女に電話してみました。
「もしもし」
「もしもし」
「なんかみんながおかしいんだ。」
「どうおかしいの?」
「どうって言われても・・・」
「それはきっと全部ドッキリだったからよ。」
「え?」
「その人たちはあなたの家族という設定だったり友達という設定だったり、あと彼女っていう設定だったりしただけ。」
「どういうこと・・・?」
「あなたの今までの人生全部ドッキリだったの」
そこで彼女は電話を切りました。そうか、ドッキリだったのか、なにもかもただの演出だったのか。そう思うと自然と涙が流れるのでした。
「さて、どうしよう」
どうしようにも僕には行くあてがありませんでした。僕はしかたなくとぼとぼと歩き始めました。

「あ、やっぱりここか」
僕が考えたり悩む時はいつも無意識にここにたどりつくのでした。
この季節だけは高い木々のさらに上から陽が射すのです。僕はそこで少し眠りました。
目が覚めた時、まだ陽は高いところにありました。
「あんまり眠らなかったのかな」
その時僕は不思議と少し清々しい気持ちでした。まっさらな自分。人はなかなか強い生き物です。僕はきっとどうにか生きていくのだろうと思います。考えてみたら与えられてばかりの人生だったかもしれません。それは演出でもしかたない。この日だまりからまた歩いて行こう。この場所だけは自分で見つけた場所なのだから。
そう決意を新たにしたところに誰か見覚えのある影が近づいてきます。その人は僕にこう言いました。
「大成功!」